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2013/02/14/23:45

069:天才

部屋でうたた寝をしていると、扉の隙間から目を覚まさずにはいられないほど、えも言われぬ臭いが漂っているのに気づいた。

嫌な予感がして部屋を出ると、その臭いはますます強く俺に襲い掛かってきた。
ふと辺りを見回すと、家にはあかねの気配以外は感じられない。
鼻と口を手で覆いながら恐る恐る臭いの元凶と思われる台所を覗くと、その理由がわかった。

テーブルの上には大量のチョコレート。
そして数々のスパイスと、およそチョコ作りとは無関係な酢やら醤油やらがそこかしこに散乱していた。

やばい…早いとこ退散しないと…。

そう思った矢先、チーンとオーブンから音が聞こえた。

「できたー!」


…俺にとってはそれが、これからの戦いへのゴングに思えた。


「あ、乱馬!ちょうどよかった。今ケーキ焼けたから待っててね。」

あかねがオーブンから取り出したそれは、噴火寸前の火山のような形をしていた。
その火山口からは強烈な刺激臭がマグマのように溢れ出ている。

「あ…俺ちょっと用事思い出した…。」
「え~。できたてが美味しいんだから今食べてよ。」
「お前…それ目の前にして本気で言ってんのか?冗談だろ?」

つーかなんであかねはこの臭いに耐えられるんだ?

そう疑問に思いつつ、この状況に俺は深い溜息をつかずにはいられなかった。

「何よー。形はちょっと悪いけど、この本の通りに作ったから大丈夫よ!」

そう言ってあかねがずいっと突き出した本には、『ちょっとスパイシーな大人のチョコレートケーキ』とでかでかと書いてあった。

「お前それ明らかに上級者向けじゃねーか。なんでそんなん…。」
「あーもーいいわよ!せっかく作ったのに…あたしが責任持って食べるからいいですよーだ!」

…それはそれでやばい。

どんなに身体の調子がよかったとしても、一瞬にしてそれが崩れる。
それくらいあかねの料理の破壊力は半端ない。

「わかった、わかったから。食うからちょっと待て。」
「ホント!?じゃあ今切るから待ってて。」

振り返ったあかねの顔は、さっきの不機嫌さは嘘のようにキラキラしていた。

「あ、ああ…。」

なんで自ら地獄に足を踏み入るような真似を…。
俺ってどんだけお人よしなんだ。

そう自戒していると、あかねが鼻歌を口ずさみながら台所から戻ってきた。

「じゃあ切りまーす。」

ぎこちない手つきで火山のような物体に包丁を入れると、ぶしゅっという音とともに中から強烈な臭いの液体が流れ出てきた。

「あ!やだチョコソースが!乱馬、もうそのまま食べて!」
「ちょ、ちょっと待て。俺まだ心の準備が…。」
「そんなのいいから早く!」

俺にとっては大事な問題なんだっての!

そう思いながら言われるがままに一口頬張った。
その瞬間、脳天にビシッと何かが流れたのを感じた。


手が痺れる。
…これは…やばい。

甘いのとしょっぱいのと辛いのと苦いのと酸っぱいのが口の中を暴れ回り、それを追いかけるかのように刺激臭が鼻に抜けていく。

どう料理すればこれができ上がるんだ…。

こんなもんを生み出せるのは、地球上であかね以外にはきっといないに違いない。


「あかね…お前ある意味天才だな…。」

勝手に震える手を抑えながら言うと、

「え、本当?レシピ通りじゃ面白くないからいろいろアレンジしてみたんだけど、よかったー。うまくできたみたいだね。」

…どうやらあかねは俺の言葉を肯定的に受け止めたらしい。

「あたしも食べよっかな~。」
「そーじゃなくて、俺が言いたいのは…ってちょっと待て!」

あかねが口に運ぼうとするのを阻止しようと、慌ててその物体が乗ったフォークを自分の口に押し込んだ。

「あ、ちょっと!いきなり何!?」

俺みたいに相当鍛えてないと、これは一発でやられる…。

「だから…これ、俺が全部食うから…。」

その場にうずくまりそうになるのをなんとかこらえながらそう言ったものの、すぐに自分の発言に激しく後悔した。

「あ、そう?いいよ。それもともと乱馬に作ったやつだし。はい、どうぞ。」


ここまできたら腹をくくるしかない。
パンッと両手を合わせて、自分を奮い立たせた。

「いただきます!」





…それからのことは…よくわからない。

うっすら覚えているのは急に目の前が真っ暗になった、それだけだった。





「ちょ、ちょっと乱馬!大丈夫!?やだ目開けて!」


PS.

ギリギリセーフなバレンタインですねってことで。
長めなのでちょいぶった切りました。続きはこちらからどうぞ→『017:負担
てかあかねちゃん散々な感じでごめんよ…。そんなあなたが私は大好きです。


ドリーマーに100のお題EDITCLAP


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